農林水産省は2026年9月30日、東京都中央卸売市場に出荷される野菜の生育状況と「2026年10月の価格見通し」を公表しました。
これによると、9月の長雨と日照不足の影響により、はくさい、レタス、ピーマンの10月の価格は平年(過去5カ年平均)を3割以上上回って推移する見込みだそうです。
一方で、北海道産を中心に生育が順調なばれいしょやたまねぎの価格は、平年を下回って推移すると予測されています。
このニュースを耳にしたとき、私は単に「仕入れが高くなって大変だ」という話だけではない、現場の新しい動きの可能性を感じました。
はくさいやレタスが3割以上高くなる一方で、ばれいしょやたまねぎが安価に手に入る。
この状況は、飲食店にとってメニュー構成を工夫し、原価を抑制する大きな「機会」になるのではないか。
そう考えています。
たとえば、サラダのベースを葉物から、平年並みで推移すると予測されているにんじんや、大玉傾向のばれいしょなどの根菜に変えてみる。
こうした柔軟な発想で、仕入れコストの波を乗りこなしている店舗も、実際に存在します。
しかし、これがすべての現場で簡単にできるかというと、話はそう単純ではありません。
なぜ、メニューをすぐに切り替えられないのか。
現場に立っていた身として痛感するのは、メニューを一つ変えるだけでも、想像以上の「判断と作業」が発生するという事実です。
レシピを書き換え、
オペレーションを整理し、
スタッフに周知する。
さらに、仕入れ先への発注内容も変えなければなりません。
「明日からレタスを減らして、じゃがいもを増やします」
そう決めても、発注方法が店ごとにバラバラで、確認作業に追われている日常の中では、その一手間が現場の首を絞めることになります。
この課題は、仕入れを受ける卸業者側にとっても同じです。
店からの急な発注変更や、複雑な注文内容。
それをLINEやFAX、あるいは口頭で受け取り、社内システムへ手作業で打ち直す。
こうした属人化された業務フローのなかでは、急なメニュー変更に対応すること自体が、配送ミスや受注漏れのリスクを高めてしまいます。
どちらかが怠慢なわけではありません。
お互いに一生懸命やっているのに、「人が頑張ってつないでいる構造」そのものが、柔軟な変化を阻んでしまっているのではないでしょうか。
それでも、現場は少しずつ変わりつつあると感じています。
最近では、店と卸の間で、発注や商品情報のやり取りをスムーズにする仕組みが少しずつ広がりを見せています。
これまで誰かの記憶や手入力に頼っていた部分を、データとして整理し直す試みです。
単に「安さ」だけを追い求めるのではなく、お互いの手間を減らしながら、状況に合わせて柔軟に仕入れを調整し合える関係性。
そんな新しいつながり方が、これからの飲食と流通の現場を支えていくのではないかと、私は考えています。
今日の仕入れの工夫が、店にとっても卸にとっても、気持ちのいい一歩につながることを願っています。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。