2026年9月29日の日本経済新聞で「レタス1玉400円超、パニック級高値の恐れ 日照不足で供給減」というニュースが報じられました。
8月下旬から続く曇天と長雨、日照不足の影響により、東京都中央卸売市場における9月中旬のレタス類の卸売価格は、前年同期比で8割高に達しているそうです。
現場にいても、この急激な変化による影響は体感として強く感じられています。
国産の調達が「過去20年で最も厳しい」とされる中、外食業界向けでは中国からの輸入レタスへ切り替える動きが加速していると報じられています。
これは、供給を途絶えさせないための極めて現実的で、かつ合理的な経営判断だと言えます。
ただ、現場の目線に立つと、そこには単純なコスト計算だけでは割り切れない、別の葛藤が生じているようにも見えます。
「産地や品質のイメージをどう維持するか」という飲食店側の悩みと、「急な代替品の提案をどうスムーズに行うか」という卸側の悩みが、同時に発生しているからです。
飲食店側では、メニューの価格を据え置くために、一時的に輸入食材を取り入れるべきか、あるいはメニュー自体を変更すべきかという判断に追われます。
一方で、卸業者側の現場でも、別の意味で大きな負担がかかっています。
仕入れ先や代替品の情報が変わるたびに、店舗への案内や注文の変更処理が発生するからです。
ただでさえ、普段からLINEやFAX、電話などバラバラの方法で届く注文を、担当者が手でシステムに打ち直しているような現場です。
「レタスを中国産に切り替えますか?」という確認作業が一つ増えるだけで、事務所の電話は鳴り止まなくなり、手入力の業務は限界を迎えてしまいます。
市場への入荷量が4割も減少するような非常事態においては、情報のやり取りのスピードが命になります。
しかし、その情報を伝達する構造が、いまだに「人の手と記憶」に依存していることが、現場の疲弊を深めているのではないかと感じています。
飲食店が悪いわけでも、卸業者が怠慢なわけでもありません。
お互いに目の前の業務を必死に回しているにもかかわらず、突発的な市場の変化に対応するための「仕組み」が整っていないことが、摩擦を生んでいるのだと思います。
それでも、この厳しい状況をきっかけに、少しずつ新しい一歩を踏み出す動きも見え始めています。
例えば、FAXや電話でのやり取りから、デジタルを介してリアルタイムに在庫や代替品の情報を共有し合う試みが、一部の現場で始まっています。
すべてを一度に変えることは難しくても、情報の伝達を少しずつ滑らかにしていくことで、突発的な高騰や品薄に対処する余力は生まれるはずです。
私たちはこの変化の時代に、ただ耐えるだけでなく、どのような仕組みを作っていけるでしょうか。
今日の仕入れの現場を見つめながら、そんな問いを抱いています。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。