2026年8月20日、東京都中央卸売市場から「令和8年7月分 統計データ」が公表されました。
この「東京都中央卸売市場 統計データ」には、水産物や青果物の取扱数量や平均単価が消費税込みで記録されています。2025年2月からはExcel形式での提供も始まり、非常に扱いやすくなりました。
しかし、この市場統計情報 月報を見ながら、「よし、来月の仕入れ交渉をしよう」と動ける飲食店や卸業者が、実際にどれほどいるでしょうか。
私自身、長く現場に立ってきた身として、このデータと現場の「距離」に強い違和感を感じています。
データを開けば、豊洲市場 取引価格などの正確な実績値が並んでいます。
ですが、飲食店の現場に戻ると、届くのはバラバラなフォーマットの納品書です。
毎日5枚も6枚も届く紙の山を前にして、市場の平均単価と比較する余裕などありません。
「市場ではアジが安くなっているらしい」と知っても、自店が今月、実際にいくらでアジを買い、原価率がどう推移しているのか。
それを手入力でExcelに打ち直すだけで、現場の時間は消えていきます。これでは、せっかくの統計データも「ただのニュース」で終わってしまうのではないかと感じています。
一方で、卸業者の側に立ってみても、状況は同じように複雑です。
「市場の価格が下がったから、店にも安く提案しよう」そう思っても、その価格を伝える手段がありません。
毎日、LINEやFAX、あるいは電話や手書きのメモでバラバラに届く注文。それを担当者が一枚ずつ読み解き、自社の古い基幹システムへ「手で打ち直す」作業が朝まで続きます。
「いつもの」「赤2」といった、店ごとの独自の呼び方を頭の中で変換しながら入力する。そんな属人化した業務に追われている中で、市場の最新データを分析し、価格交渉に活かす余裕など生まれるはずがありません。
誰が悪いわけでもなく、この「人が頑張ってつないでいる構造」そのものが、データを現場から遠ざけているのではないでしょうか。
次回、2026年8月分の統計データは9月24日に公表される予定です。データはこれからも、正確に、そして便利に更新され続けるでしょう。
しかし、それを受け取る現場の構造が「紙と手入力」のままであれば、いくらExcelデータが使いやすくなっても、その価値は届きません。
飲食店が、日々の仕入れ価格を自動で比較できること。卸業者が、バラバラな注文の処理に追われず、本来の「目利き」や「提案」に集中できること。
そうした「間をつなぐ仕組み」が整って初めて、公的なデータも現場の武器になるのではないかと考えています。
私たちは、単に便利なシステムを作りたいわけではありません。こうした、現場に潜む「見えない摩擦」を、構造から整理し直したいだけです。
みなさんの現場では、今日の仕入れ値をどのように把握し、判断されているでしょうか。
本記事は、KURUチームが実際の飲食店運営・流通現場での経験をもとに構造的な課題を整理したフィールドノートです。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。