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豆腐・納豆のコスト指標(2026年)初公開から考える、食材仕入れの原価交渉と現場のリアル

2026年10月30日、豆腐・納豆コスト指標作成協議会から、食料システム法に基づく「豆腐と納豆のコスト指標(2026年8月時点)」が初めて公開されました。

製造から卸売、小売までの合計コスト(税込・利潤除く)として、充填豆腐は64.6円/300g(2025年度基準は61.2円)、カット豆腐は86.1円/300g(同81.6円)、納豆は109.6円/50g×3パック(同103.8円)と算出されています。すべての品目でコストが上昇しており、製造段階における包装材料費の上昇率は10%を超えているとのことです。

長年「価格が上がりにくい食材」の代表格だった豆腐や納豆について、公的な裏付けのある数値が提示されたことは、業界にとって大きな変化ではないかと感じています。


コスト指標が示す「共通の物差し」という機会

これまで食材仕入れの現場では、原材料や包材コストの上昇について「なんとなく上がっている」という感覚で話がなされることが少なくありませんでした。

仕入れる飲食店側としても、卸業者から値上げの打診があった際に、それが業界全体の構造的な問題なのか、個別企業の事情なのか判断がつきにくいという難しさがありました。

今回、食料システム法に基づく豆腐と納豆のコスト指標として具体的な数字が示されたことで、互いに客観的なデータをもとに議論できる「共通の物差し」が生まれたと言えます。

これは、双方にとって透明性の高い取引を進めるための前向きな機会ではないでしょうか。


「根拠の提示」と「現場での反映」の間にある壁

一方で、この指標が公開されたからといって、すぐに現場の取引価格がスムーズに改定されるわけではないと感じています。

今回提示された数値は義務的な指定価格ではなく、取引協議のための参考指標だからです。

卸の立場から見れば、コスト上昇の根拠は得られたものの、長年の付き合いがある飲食店に対して「指標が出たから値上げしてほしい」とは切り出しにくい空気が残っています。

一方で飲食店の立場としても、仕入れ値が上がる理由を理解できたとしても、それを即座に自店のメニュー価格や原価率の調整に反映できるとは限りません。


食材仕入れの原価交渉における指標の使い方

飲食店の現場に長く立ち、その後流通の側にも関わってきた中で思うのは、原価交渉の難しさは「感情や力関係になりやすい構造」に原因があるということです。

根拠がない状態での交渉は、どうしても「安くしてほしい」「これ以上は引けない」という感情の押し引きになりがちでした。

公的な指標という客観的なデータが存在することで、感情論ではなく「構造としてどこにコストがかかっているのか」を冷静に共有する土台が整いつつあります。

「互いに無理を重ねないための協議」を行うツールとして、こうした指標が機能していくのではないかと感じています。


双方の現場が持続可能であるために

食材の価格見直しは、どちらか一方だけが負担を抱え込む形では長続きしません。

卸業者が過度なコスト増加を飲み込み続ければ供給の安定が損なわれますし、飲食店が仕入れ高騰をすべて吸収しようとすれば店舗の運営自体が限界を迎えます。

今回の指標公開は、単なる数値の発表にとどまらず、飲食と流通が健全な関係を再構築するためのきっかけになり得ると考えています。

まずは自店の仕入れ価格と世の中のコスト構造を並べて眺めてみること。そこから現場でできる小さな対話が始まるのではないでしょうか。

私たちは、日々の取引の中で互いの苦労や構造をどこまで理解し合えているでしょうか。

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出典

KURUマート 代表
KURUマート 代表
飲食店15年 → 卸・流通の現場へ

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。

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