農林水産省は2026年9月10日、令和8砂糖年度(2026年10月〜2027年9月)における価格調整制度の各種指標を決定し、公表しました。
それによると、砂糖調整基準価格は前年度の153,200円/製品トンから、155,500円/製品トンへと引き上げられることになりました。
このニュースは、製菓やスイーツ、とろみ剤などを日常的に扱う飲食店や卸業者の現場にとって、決して他人事ではありません。
一方で、この決定をただ「コスト増の懸念」として捉えるだけで良いのだろうか、とも感じています。
今回の公表では、国内の生産現場を支える交付金の引き上げも示されています。
てん菜を原料とする国内産糖交付金の単価は、前年度の18,559円/製品トンから27,592円/製品トンへと大幅に引き上げられました。
さらに、さとうきびを原料とする交付金も、鹿児島県種子島で47,898円/製品トン(前年度39,394円)、奄美大島で80,530円/製品トン(前年度71,890円)へと引き上げられています。
これは、気候変動や担い手不足に直面する国産甘味資源を守り、将来的な「安定調達」につなげるための重要な一歩ではないでしょうか。
目先の価格だけでなく、持続可能な仕入れルートが維持されることは、現場にとって大きな安心材料になるはずです。
とはいえ、仕入れ価格の変動が現場の負担になるのは事実です。
特に、砂糖やでん粉を多く使う製菓店や、介護食を扱う現場では、段階的な原価の押し上げが懸念されます。
そして、その影響を最初に受けるのは、現場をつなぐ卸業者です。
メーカーから仕入れ価格の改定を通知されるたびに、卸の事務所では膨大な作業が発生します。
取引先ごとに異なる見積書を作り直し、古い基幹システムへ手動で単価を打ち直していく。
この「情報の書き換え」に追われる構造こそが、現場を静かに疲弊させているのではないかと感じています。
現場で長く仕入れや発注を見てきて、気づいたことがあります。
私たちは、原材料の価格そのものよりも、それに伴って発生する「確認と修正の事務作業」に、最もエネルギーを奪われているのかもしれません。
飲食店側でも、価格改定の通知が届くたびにメニューの原価計算をやり直し、発注時の金額に間違いがないかを目で確認しなければなりません。
情報の伝達がアナログで、属人的なままだからこそ、社会の変動がそのまま現場の作業負荷として跳ね返ってきてしまいます。
誰が悪いわけでもないのに、変化のたびに全員が余計な時間を取られてしまう構造があります。
私たちは、市場の価格決定をコントロールすることはできません。
しかし、価格が変わるたびに発生する「確認の摩擦」を減らす仕組みは、自分たちの手で整えることができるはずです。
仕入れた情報が自動で整理され、誰が担当してもスムーズに取引が回る状態。
そうした環境が整えば、外部の波に一喜一憂せず、目の前のお客様や、届けるべき商品に集中できるようになるのではないでしょうか。
これからの時代、現場が無理をせずに変化を乗り越えていくために、私たちはどのような仕組みを準備しておけばよいのでしょうか。
その答えを、これからも現場の皆様と一緒に探していきたいと考えています。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。