帝国データバンクが2026年8月に公表した「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」によると、非正社員の不足を感じている飲食店の割合は57.7%にのぼり、全業種の中で最も高かったそうです。
前年同月の61.8%に比べると少し低下しているようですが、それでも依然として半数以上の店が、慢性的な人手不足に悩まされているのが現実です。
現場に立っていると、この数字は単なる統計ではなく、日々の「回らない恐怖」として肌で感じられます。
飲食店で15年以上現場に立ってきた経験から、いつも思うことがあります。
人が足りないとき、私たちは真っ先に「接客が疎かになる」「料理の提供が遅れる」といった、お客様に関わる部分を心配します。
しかし、実際に現場の体感として、最もスタッフの精神を削っているのは、営業後のバックオフィス業務ではないでしょうか。
・山のような伝票の整理
・バラバラな方法での深夜の発注作業
・届いた食材の検品と、価格の確認
料理や接客に集中したいはずなのに、気づけばパソコンや紙の束と格闘している時間が、驚くほど多く存在していると感じています。
その後、私は卸・流通の現場にも関わるようになりました。
そこで目にしたのは、飲食店側と同じように、いや、それ以上に「人の手」に依存してギリギリで回っている現実でした。
飲食店から届く注文は、LINE、FAX、電話、時には手書きのメモなど、見事にバラバラです。
それらを、事務員さんたちが一枚ずつ確認し、社内の古い基幹システムへと手で打ち直していました。
「生」「赤2」「いつもの」といった、取引先ごとの独特な呼び方を、担当者の記憶だけを頼りに処理している場面にも何度も遭遇しました。
飲食店が悪いわけでも、卸業者が怠慢なわけでもありません。
ただ、お互いの間にある「つなぎ目」が、すべて人の頑張りによって維持されている。
この構造自体が、雇用過不足が叫ばれる飲食店や卸の現場を、より苦しくさせているのではないかと感じています。
世間では、人手不足の解決策として「バックオフィスのデジタル化」がよく叫ばれます。
しかし、現場にいると、その言葉が少し上滑りしているように聞こえることもあります。
新しいシステムやアプリを導入したものの、
・使い方が複雑で、かえって確認作業が増えた
・取引先ごとに異なるシステムを使い分けることになり、画面だらけになった
そんな経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
システムに無理やり現場の業務を合わせるのか。
それとも、今のバラバラな業務をそのまま包み込めるような、新しい仕組みを作れるのか。
便利なツールをただ入れるだけでは、根本的な解決にはならないのではないか、と私たちは考えています。
私たちが本当に見直すべきなのは、個人の努力や新しいツールの数ではないのかもしれません。
飲食店と卸の間にある、長年の慣習によって複雑化した「構造」そのものを整理し直すこと。
人がやらなくていい入力や転記は仕組みに任せ、人間は判断が必要な作業だけに集中できる状態をつくる。
そうすることで、人が一人抜けただけでも業務が止まってしまうような「属人化」から、少しずつ脱却できるのではないかと感じています。
2026年、雇用過不足に直面する飲食店が、本来の「美味しい料理を届ける」「心地よい空間をつくる」という仕事に時間を使えるようになるために。
私たちは、どのような構造をつくっていけばいいのでしょうか。
現場の試行錯誤は、これからも続きます。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。