最近、ひとつの調査結果が目に留まりました。
帝国データバンクが発表した「『ラーメン店』の倒産動向(2026年1-9月)」です。
それによると、2026年1〜9月までに発生したラーメン店の倒産は56件に達し、前年の年間件数(60件)に迫る勢いとなっています。
何より考えさせられたのは、倒産した店の64.3%(36件)が「業歴10年以上」の店だったという事実です。
地元で愛され、確かな技術を持っていたはずの店が、なぜ今、暖簾を下ろさざるを得ないのか。
現場を歩いていると、そこには「味」だけでは乗り越えられない、構造の壁があるように思えてなりません。
長年続いてきた店ほど、お客さんとの絆が深いものです。
「いつもの味を、いつもの価格で届けたい」という想いは、飲食に携わる者なら誰もが抱くものでしょう。
しかし、小麦や野菜、油脂類といった原材料の高止まりは、容赦なく店を圧迫します。
さらに人件費の上昇も重なり、かつてのような「努力と工夫」だけでは、利益を残すことが極めて難しくなっています。
仕入れ価格が上がっても、価格を上げづらい。
その葛藤の末に、体力を削り取られていく構造が、今の数字に表れているのではないかと感じています。
ラーメンの味を磨くことには、何百時間も費やすことができます。
しかし、その一杯を作るための「仕入れ」や「発注」の作業には、どれだけの時間が割かれているでしょうか。
毎日、バラバラの方法で届く納品書を整理し、電卓を叩いて原価を計算する。
複数の卸業者に、それぞれ電話やFAXで発注をかける。
こうした「仕込み以外の作業」が、実は現場の体力を少しずつ奪っています。
価格交渉をする余裕もなく、ただ言われた通りの価格で仕入れ続ける。
こうした構造的な摩擦が、結果として「利益の残らない経営」を長引かせてしまうのではないかと思います。
ただ、この状況を悲観するばかりではありません。
現場では、新しい変化の兆しも生まれつつあります。
例えば、長年の付き合いだからと曖昧にしていた仕入れの価格を、自動で可視化して比較する。
あるいは、発注や納品書の管理をシステムに任せ、空いた時間で経営の数字を見直す。
味を落とすのではなく、仕入れの構造を見直すことで、一杯あたりの利益を守る。
そんな「強い経営」へシフトしようとする店主の方々に、最近よくお会いします。
職人が、職人のままでいられるように。
そのためには、どんぶりの外側にある「仕組み」を整えることが、これからの店づくりに必要な一歩なのかもしれません。
私たちは、そのために何ができるのか。
日々、現場の皆さんと対話を重ねながら、模索を続けています。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。