同じ商品なのに、
店によって仕入れ値が違う。
飲食店をやっていれば、
一度は聞いたことがある話だと思います。
「あそこはもっと安く入れてるらしい」
事実、違います。
理由としてまず挙がるのは、数量です。
たくさん買う店は安い。
これは間違っていません。
ただ、現場を見ていると、
それだけでは説明がつかない差もあります。
月の仕入れ額がほとんど同じ二店で、
価格が違うことがあります。
差がどこから来ているのか。
卸の立場に立つと、見え方が変わります。
同じ商品を同じ数だけ売っても、
店によってかかる手間がまったく違うのです。
たとえば、
このすべてが、人の時間です。
そして人の時間は、そのままコストです。
卸の利益率は、もともと厚くありません。
その中で、
・確認の電話を一本かける
・伝票を作り直す
・請求のあとに催促する
これが月に何度も発生すれば、
その店から得られる利益は簡単に消えます。
だから、価格で調整されます。
明示的に「あなたは手間だから高い」とは言いません。
でも、結果としてそうなります。
価格を下げてほしいと言うとき、
多くの場合は数量の話になります。
でも、
これだけで、業者側のコストは実際に下がります。
下がったコストは、交渉できる余地になります。
順番として、こちらのほうが先ではないかと思うのです。
仕入れ価格は、
交渉力だけで決まっているわけではありません。
その店と取引するのに、
どれだけの人手がかかっているか。
その積み重ねが、価格に出ています。
「あそこは安いらしい」
そう聞いたとき、
どうすれば安くなるかを考える前に、
なぜ違うのかを見てみると、
別のものが見えてくるかもしれません。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。