総務省が公表した、2026年9月4日の家計調査(2026年7月分)における食料への支出データを見ると、私たちの生活実感と重なる、ある興味深い傾向が見えてきます。
全体の消費支出は実質前年同月比3.6%減と、8カ月連続で減少しています。
日々の自炊に使う食材や惣菜などは、より手頃な品へと切り替える節約志向が強まっているようです。
しかしその一方で、「外食」への支出は実質5.9%増加しています。
日常の食事は徹底して節約するけれど、外食やレジャーなどの特別な体験にはお金を使う。
いわゆる「メリハリ消費」の傾向が、データの上でもはっきりと現れているのではないかと感じています。
外食への支出が増えているという事実は、飲食店にとって間違いなく大きな機会です。
「選ばれれば、しっかりとお客さまが来てくれる」という兆しは、現場にとって明るい材料に違いありません。
ただ、現場の目線でこの数字を眺めると、少し違った側面も見えてきます。
消費者が財布の紐を固く締めながらも、あえて外食を選ぶ。
ということは、その「一回の外食」に求められる期待値は、以前よりもずっと高くなっているのではないでしょうか。
せっかく外食するなら、失敗したくない。
本当に美味しい料理と、心地よい空間で、特別な時間を過ごしたい。
そうした厳しい目で、お店が「選別」される時代に入りつつあるように思えます。
お客さまに選ばれるために、もっと魅力的なメニューを開発したい。
接客の質を上げて、特別な時間を提供したい。
そう願う飲食店は多いはずです。
しかし、現場の現実はどうでしょうか。
毎日、営業が終わった深夜に、バラバラの手段で複数の卸業者へ発注をかける。
納品された食材と請求書の数字が合っているか、一つずつ確認する。
仕込みやスタッフのシフト調整に追われ、気がつけば机の上が書類で山積みになっている。
価値を高めるためのクリエイティブな仕事に時間を使いたいのに、
日々の細かな事務作業や確認作業に、体感で一日の大半を奪われてしまっている。
そんな構造的な課題が、多くの現場に横たわっているのではないかと感じています。
この摩擦は、飲食店側だけの問題ではありません。
食材を届ける卸の現場でも、まったく別の苦労が生まれています。
店ごとに異なる注文方法に対応し、
手書きのFAXやLINEの文字を、毎日社内システムへ手入力で打ち直す。
取引先独自の呼び方を担当者が必死に覚え、属人化された業務をなんとか回している。
どちらかが怠慢なわけではありません。
誰もが一生懸命に現場を回そうとしている。
しかし、人と人をつなぐ仕組みがアナログなまま放置されているため、
双方が「価値を生み出す仕事」に集中できない構造になっているのではないかと感じています。
幸いなことに、現場は少しずつ変わりつつあります。
これまで「業界の慣習だから」と諦められていた、
注文のデータ化や、業務の役割分担を、仕組みから見直そうとする動きが生まれています。
便利なツールをただ導入するのではなく、
「人がやらなくていい作業は仕組みに任せる」という前提で、
飲食店と卸の間の構造を整理し直すこと。
それが実現できれば、飲食店はもっと料理や接客に集中でき、
本当の意味でお客さまに選ばれる「付加価値」を作れるようになるはずです。
私たちは、単に効率化を目指したいのではありません。
飲食店も、卸も、それぞれが本来やりたかった仕事に集中し、
ちゃんと報われる世界をどう作っていくか。
そのための試行錯誤を、今まさに現場の皆さんと一緒に進めています。
皆さんの現場では、今日、どの作業に一番の時間を使っているでしょうか。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。