個人向けの生活必需品から、
飲食店の仕入れ食材まで。
2026年に入ってからも、
値上げの波は収まる気配がありません。
帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査によると、
2026年9月の食品値上げは合計4,923品目に達します。
これは、単月としては今年最多の規模です。
平均値上げ率は1回あたり11%。
前年同月の1,467品目と比較すると、
約3倍という異例のペースで拡大しています。
しかし、こうした数字を見て、
「で、うちの店は具体的にいくら上がったのか」を
即座に答えられる現場が、
どれだけあるでしょうか。
今回の値上げで最も多い分野は
「調味料」の1,959品目です。
マヨネーズやドレッシング、
しょうゆ、つゆ、食酢など、
メニューのベースになるものが並びます。
次に多いのが
「加工食品」の1,848品目。
冷凍食品やチルド食品、
すり身製品などが中心です。
これらは、特定の高級食材ではなく、
日々当たり前に使うものばかりです。
だからこそ、
「なんとなく原価率が上がっている気がする」
という、曖昧な危機感のまま
現場が流されていくのではないかと感じています。
飲食店に15年以上立ってきたからこそ分かりますが、
営業後の疲れた体で
何枚もの納品書を見比べるのは、
想像以上に過酷な作業です。
・マヨネーズが1本あたり何円上がったのか
・その結果、メニュー全体の原価がどう変化したのか
・他の卸業者から買えば、いくら安くなるのか
これらを調べるには、
手書きの納品書やFAXの束を引っ張り出し、
電卓を叩くしかありません。
結果として、
「よく分からないけれど、とりあえず高くなった」
という体感だけで、
日々の営業をこなすことになります。
これは現場の怠慢ではなく、
情報を整理する余裕がないという
構造の限界です。
一方で、食材を届ける卸業者の現場はどうでしょうか。
4,923品目もの値上げがあるということは、
それだけ膨大な「価格改定の事務処理」が
発生していることを意味します。
取引先ごとに異なる仕入れ価格を、
社内システムに手入力で打ち直していく。
注文はLINEやFAX、口頭など、
バラバラの手段で届き続けます。
担当者は、取引先ごとに異なる呼び方を
頭の中で翻訳しながら、
新しい価格を間違えないように処理しなければなりません。
値上げの主な要因は「原材料高」が90.7%ですが、
「人件費」も51.3%を占めています。
届ける人のコストも上がっている中で、
このアナログな手作業を続けること自体が、
現場をさらに圧迫しているのではないでしょうか。
値上げそのものを止めることは、
誰にもできません。
1〜11月の累計値上げ品目数は
1万9,083品目に達しており、
年間では前年の2万609品目を上回る見通しです。
だからこそ、
「高くなったから、別の安いものを探す」
という場当たり的な対応だけでは、
もう限界が来ていると感じています。
必要なのは、
価格の変化が自動で可視化され、
注文や価格の管理に
人が翻弄されない構造をつくることです。
私たちは、この変化の激しい時代を、
どうやって乗り越えていくべきなのか。
今までのやり方の延長線上に、
その答えはあるのでしょうか。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。