個人向けの買い物でも、
最近は「また高くなったな」と
感じる場面が増えました。
これが飲食店の仕入れとなると、
その影響は
個人の生活とは比較にならない規模で
押し寄せてきます。
帝国データバンクが発表した
「食品主要195社」価格改定動向調査によると、
この2026年9月に値上げされる飲食料品は
合計4,923品目に上るそうです。
これは2026年で単月最多、
年内最大の値上げラッシュとなります。
特に、マヨネーズやしょうゆなどの「調味料」が1,959品目、
「加工食品」が1,848品目と、
飲食店のベースとなる食材が
狙い撃ちされたような形になっています。
こうした大きなニュースを見ると、
「大変だ」と感じると同時に、
一つの疑問が浮かびます。
それは、
「で、自分の店は結局、いくら仕入れ値が上がったのか」
ということです。
実は、この問いに対して
すぐに正確な数字を答えられる飲食店は、
それほど多くありません。
平均値上げ率が11%と言われても、
自店が使う調味料や加工食品の割合、
仕入れ先との取引条件によって、
実際のインパクトは全く異なるからです。
しかし、毎日の営業に追われる中で、
届いた請求書を一つひとつ過去のデータと照らし合わせ、
値上げの影響を計算する時間を作るのは、
体感として極めて難しいのではないかと感じています。
一方で、商品を届ける卸業者の側にも、
別の意味での「値上げラッシュ」が起きています。
メーカーから値上げの通知が届くたびに、
卸業者は取引先である飲食店に対して、
価格改定の案内を送らなければなりません。
「すべての店に、一律で同じ価格で売る」
というわけにはいかないのが、
B2Bの難しいところです。
取引の規模、
配送の頻度、
長年の付き合い。
そうした様々な要素によって、
店ごとに設定された価格が異なります。
結果として、値上げの時期が来るたびに、
担当者は取引先ごとの価格表を手作業で書き換え、
社内システムへもう一度手で打ち直す、
という作業に追われることになります。
飲食店側は、
「いつの間にか仕入れ値が上がっている」
と不信感を抱きやすい。
卸側は、
「心苦しいが、メーカーからの値上げを転嫁せざるを得ない。
しかし、その説明と設定作業だけで力尽きてしまう」
と疲弊している。
この摩擦は、
どちらかの誠意が足りないから
起きているわけではありません。
・バラバラに届く値上げの通知
・取引先ごとに異なる複雑な価格管理
・それを人の記憶と手作業でつなぐ構造
これらが重なり合うことで、
価格改定というデリケートな作業が、
現場に過剰な負担を強いる「作業の嵐」に
変わってしまうのです。
もし、
仕入れ値の変動がリアルタイムで可視化され、
卸側の価格変更がスムーズに共有される
仕組みがあったなら。
飲食店は、
「どのメニューの原価が上がったのか」を即座に把握し、
適切な対策を打てるようになります。
卸側も、
価格変更のたびに発生する膨大な手入力から解放され、
「なぜこの価格になるのか」という
本質的な対話に時間を割けるようになるはずです。
私たちは、
単に「安く仕入れる方法」を探すのではなく、
こうした「情報の伝達コスト」を
構造から引き下げたいと考えています。
今回の食品値上げ 2026年9月の波は、
これまでのやり方の限界を
私たちに静かに問いかけているのかもしれません。
皆さんの現場では、
この変化をどのように受け止めていますか。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。