帝国データバンクの食品価格改定に関する動向調査(2026年8月31日発表)によると、2026年9月に実施される飲食料品の値上げは合計4,923品目に達するそうです。
これは単月として2026年で最多、年内最大規模とのこと。
現場に立つ身としては、数字の大きさよりも「またか」というため息の方が先に出るのではないでしょうか。
しかし、ここで私たちが本当に向き合うべきは、単なる数字の増減だけではないと感じています。
このニュースを見て、まず頭をよぎるのは「で、自店の仕入れコスト 飲食店としていくら上がったのか」という問いです。
分野別では「調味料」が最多の1,959品目となり、平均値上げ率は11%に達するとされています。
しょうゆ、マヨネーズ、つゆ製品など、日々の調理に欠かせないものばかりです。
本来なら、すぐにでも原価率の計算をし直さなければなりません。
しかし、実際の飲食店の現場では、それが簡単にはいきません。
毎日の仕入れ先は複数あり、納品書は紙のまま重なっています。
手元の電卓で計算しようにも、日々の営業に追われ、気づけば月末を迎えてしまいます。
「なんとなく原価が上がっている気がする」という体感だけで、日々を乗り切っている店も少なくないのではないでしょうか。
仕入れコストが上がる中、飲食店側から「なんとか安くならないか」という相談を受ける卸業者も、また別の苦しみを抱えています。
値上げの案内を、一件一件の店に正確に送るだけでも膨大な作業が発生するからです。
取引先ごとに異なる注文方法。
LINE、FAX、電話、さらには手書きのメモ。
これらがバラバラに届く中で、さらに値上げの改定データを古い基幹システムに手で打ち直す作業が重なります。
「いつもの」と呼ばれる注文の品が、今回の値上げ対象なのかどうか。
それらを担当者の記憶を頼りに確認しているのが、今の流通の裏側にある現実です。
飲食店と卸業者が、それぞれ「いくら上がるのか」「どう伝えるか」で疲弊している。
この構造を見ていると、本当に見直すべきは価格そのものではなく、情報のやり取りのあり方ではないかと感じます。
誰が、何を、いくらで買ったのか。
その情報が整理されていないために、双方が不要な確認作業や、手入力のミスに時間を取られています。
原材料高や物流費の上昇といった外部要因を、一店舗、一企業の努力だけで解決するのは限界があります。
だからこそ、無駄な摩擦を減らし、業務を少しでもシンプルにする構造が必要なのではないでしょうか。
値上げが常態化する2026年の今、私たちはどのように仕入れコストと向き合うべきでしょうか。
安い仕入れ先を求めて奔走するのも、一つの方法かもしれません。
しかし、情報を整理し、人が頭と手を動かす時間を減らすことで、見えてくるコスト削減もあると感じています。
飲食店も、卸業者も、日々の「処理」で手一杯になっています。
この状況で、さらに値上げの波を乗り切るための余裕をどうやって作るのか。
その答えは、お互いの間にある見えない摩擦を、少しずつ取り除いていくことの先にあるのではないかと、日々現場を見ながら考えています。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。