日本食糧新聞の報道によると、日清製粉が業務用小麦粉の価格改定を実施すると発表されました。2026年12月19日の納品分から適用され、強力系小麦粉で25kg当たり295円(税抜き)、中力系・薄力系で240円、国内産小麦100%小麦粉で395円引き上げられるとのことです。
背景には、2026年10月1日からの輸入小麦の政府売渡価格が5銘柄平均で12.0%引き上げられたことや、中東情勢の影響による輸送費・動力費の上昇があります。
この数字だけを見ると、現場の負担増ばかりに目が向きがちです。しかし、この時期の改定は現場にどのような変化をもたらすのでしょうか。
年末年始という需要期を目前にしたこのタイミングは、飲食店にとってメニュー全体の価格適正化を進めるひとつのきっかけになり得ると感じています。
これまで原材料費が上がっても、「客離れが怖い」と価格を据え置いてきた店は少なくありません。ですが、市場全体が動く時期だからこそ、商品の価値を再定義し、適正な原価率と利益率を確保するための見直しを行いやすくなる側面もあります。
看板商品の質を高めたり、高付加価値な季節限定メニューを導入したりと、前向きな工夫を始める動きも体感として増えている印象を受けます。
一方で、この影響を直接受けるのは飲食店だけではありません。食材を供給する卸業者の現場にも、非常に大きな作業負担が発生します。
今回の改定に伴い、卸側は取り扱う多数の取引先に対して、改定時期や新価格の案内を行わなければなりません。強力系で295円、薄力系で240円という品目ごとの差額を正確に伝達し、システムや伝票に反映させる作業は極めて煩雑です。
電話、FAX、LINEなど、店ごとに連絡手段がバラバラな中で、確認漏れを防ぎながら個別に対応していく手間は、担当者の膨大な時間と神経を奪っていきます。
飲食店側も手一杯ですが、卸側も「連絡が行き届いていない」「前の価格で請求が来ている」といったトラブルの対応に追われます。
改定のたびに発生するこの混乱は、どちらかの不注意が原因ではありません。取引先ごとに異なる呼び名や価格体系を、担当者の記憶や手作業でつなぎ合わせているという、業界全体の「構造」に理由があると感じています。
誰かが無理をして手作業でカバーし続けるやり方は、原価や物流コストが変動する時代において、少しずつ維持が難しくなっているのではないでしょうか。
原価の上昇は決して楽な事態ではありませんが、現場が自らの価値を見直し、同時に無駄な確認作業を削ぎ落としていく機会にもなり得ます。
手作業による確認ややり直しを減らし、料理や接客、本来の提案業務といった「人にしかできない判断」に時間を使える状態をつくること。
今回の業務用小麦粉の値上げ(2026年12月)という波をきっかけに、飲食店と卸の双方が無理をせず報われる形へ、現場のあり方をどう整えていけるでしょうか。私たちもその問いを抱えながら、試行錯誤を重ねていきたいと考えています。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。