帝国データバンクが発表した2026年8月の「カレーライス物価指数(5メニュー平均)」は1食あたり348円となり、前月からわずかに低下しました。
主食であるコメの価格が落ち着き、銘柄米が5kgで3000円を下回る状況が常態化してきたことは、飲食店にとっても卸業者にとっても安心できる材料です。
しかし、現場に立っていると、手放しで喜べる場面ばかりではないと感じています。
今回の調査を見ると、メニューごとに明暗が分かれています。
チキンカレーは1食215円(前年同月比4円安)と供給回復を背景に安値を更新した一方、最高値のシーフードカレーは501円(同6円高)、ビーフカレーは459円(同5円高)と高い水準が続いています。
天候不順等による野菜の高止まりや、肉類・魚介類の価格維持が重荷となっているためです。
主食の原価が下がっても副食材が上がることで、一皿あたりの利益率をどう保つかという新たな悩みが生まれているのではないでしょうか。
飲食店にとって、コメの価格下落は確実な仕入れ原価の緩和機会です。
一方で、野菜や肉の仕入れ価格は日によって大きく変動するため、全体としての原価率を安定させることが難しくなっています。
すべてのメニューを一律に値上げするべきか、あるいは原価の落ち着いたチキンを使った料理などを全面的に押し出すべきか。
毎日の営業の中で届く伝票を見ながら、現場では細かな判断が求められていると感じます。
この価格差の広がりは、食材を届ける卸業者にとっても大きな課題です。
コメのように価格が安定し始めた品目もあれば、仕入れ値が毎週のように変わる生鮮品もあります。
飲食店に対して「どの品目が下がり、どこが高止まりしているのか」を正確かつタイムリーに伝える作業は、想像以上に手が取られます。
電話やFAX、口頭での発注が残る現場では、価格変更の連絡漏れや入力ミスへの不安が常に付きまといます。
品目ごとの価格変動が激しい時期ほど、受注情報の打ち直しや確認作業といった卸側の負担も増しているのではないでしょうか。
2020年平均を100とした指数は135.9となり、依然として高い水準にあります。以前のような原価構造にすぐ戻るわけではありません。
それでも、コメ価格の落ち着きを機会として捉え、メニューごとの販売価格や食材構成を見直す動きは着実に広がっています。
また卸側でも、品目ごとの最新価格や仕入れ状況をできるだけスムーズに店舗へ共有できる仕組みづくりが進みつつあります。
一方が無理を重ねるのではなく、飲食店と卸が正確な情報を揃えて価格や構成を調整できる状態をつくること。
食材の価格揺れが続く今、現場でできる最初の一歩はそこにあるのかもしれません。
飲食と流通の双方が納得できる選択肢をどう増やしていくのか、これからも現場から見つめていきたいと思っています。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。