世の中のIT化が進む一方で、
食品流通の現場には、
今でもFAXが毎日のように届きます。
2026年9月3日、
AUDER株式会社が食品流通業界に特化した
「AUDER AI-OCR」というサービスをリリースし、
同時に4.5億円の資金調達を発表したというニュースを目にしました。
この大きな数字や新しい技術の登場は、
裏を返せば、
それだけこの業界の「受発注 アナログ」な課題が深く、
解決が求められている証拠でもあると感じています。
卸や市場の現場を覗くと、
今でもFAX用紙が何枚も出力され、
壁に貼られたり、机に積み上げられたりしています。
今回の「AUDER AI-OCR」は、
FAXなどで届く発注書や送り状をAIで読み取り、
データ連携を可能にするものだそうです。
特に注目したいのは、
商品名や取引先、産地情報の「表記ゆれ」を自動で補正する機能や、
信頼性の低い箇所をハイライトして、
人間がダブルチェックしやすくする設計です。
このサービスを、福岡県魚市場株式会社が
導入第一号として利用を開始する予定とのことですが、
まさに水産の現場ほど、
手書きや曖昧な表記が飛び交う場所はありません。
そもそも、なぜFAXを読み取る技術が必要なのか。
それは、届いたFAXの内容を、
誰かが社内システムへ「手で打ち直している」からです。
取引先ごとに異なる
「生」「赤2」「いつもの」
といった独自の呼び方。
これらを担当者が頭の中で翻訳し、
キーボードを叩いてシステムに入力する。
この作業は非常に属人化しやすく、
担当者が一人休むだけで、
その日の出荷業務全体が滞ってしまうこともあります。
人が頑張ってつないでいる構造が、
現場の静かな疲労を生んでいるのではないでしょうか。
AI-OCRの精度が上がれば、
確かに手入力の負担は減るかもしれません。
しかし、ここで立ち止まって考えたいのは、
「なぜ、発注側はFAXを送り続けるのか」
という点です。
飲食店や仕入れ側にとって、
FAXは「すでに手元にあり、最も操作が簡単な道具」です。
受け取る側がどれだけシステム化を進めても、
送る側の事情や習慣が変わらなければ、
紙のやり取りそのものをなくすことは難しいと感じています。
便利なツールを導入することは、
目の前の作業を楽にするための大切な一歩です。
ただ、それと同時に、
「情報をそもそもどうやって発生させ、どう流すか」
という全体の構造を見直すことも必要ではないでしょうか。
入力されたデータをきれいにすることと、
そもそも乱れたデータが発生しない仕組みを作ること。
この両方の視点があって初めて、
現場が本当に無理をしなくていい環境が、
少しずつ整っていくのではないかと感じています。
私たちは、どのような構造をつくれば、
誰もが疲弊せずに取引を続けられるのでしょうか。

飲食店として15年以上現場に立ち、その後は卸・流通の内側にも入りました。どちらの立場も見てきたからこそ気づいたことを、ここに書きとめています。